ちょっぴり現実的で厳しい福祉の話。
この記事をでは、以下の3点を書いております。
- 職員の給与を上げられない理由
- 人員を増やしたくない理由
- 職員が考える就労移行の未来予想
【筆者の自己紹介】
就労移行支援施設で働いているフクシー(@hukushiii)です。
精神疾患や発達障害をお持ちの方を中心に、年間100回以上面談をしております。
支援員の給与はなぜ低い?
低い給与とは?
まず、どこからが低い給与なのかを考える必要があります。
参考に国が出しているデータをご覧ください。
日本人の平均所得は約552万円です。(中央値437万円)
日本人に最も多い所得層は200〜300万円となります。
そして、このボリューム層(年収200〜300万円)こそが就労移行支援職員の一般的な年収のレンジ(範囲)です。
私(支援員)の年収もこの最も大きい所得層(200~300万円)に該当しておりますので、実態として就労移行支援の職員の収入は高くないと言えるでしょう。(額面で約225万円)(本当)
別の参考資料としてindeedの出している業種ごとの年収が簡単に調べられるサイトをすぐに見れるようにしておきます。(このサイトでは就労支援員の平均年収は2,992,456円となっております。)
とりあえず、低年収の基準をざっくり350万円以下としましょう。
理由は、平均年収で区切るにはボリューム層とかけ離れている気がしますし、中央値(年収437万円)も単純計算で毎月36万円(ボーナスなし)の計算になるので、やはり低賃金と思えません。
支援員の給与が上げられない理由
単純な話、どれだけ優秀な支援員がいても売り上げが伸びないからです!
それには理由があります。
そもそも、就労移行支援は人員配置(職員の数)と利用者の定員(20人がほとんど)、事業所の設備(広さなど)などは国がある程度決めております。
そのため、牛丼チェーンのようにワンオペ(1人で運営)したらダメですし、教育(自動支援)ロボットに任せて人員不足を補うという手を使うことは、制度上許されておりません。
(万が一、事業所が上記のようなことをしていた場合、国から事業運営の許可を剥奪されたりペナルティーを受けることになっております)
ということは、
かなり優秀な社員がいてもワンオペにできず、1人は1人分の人件費として支払うということになります。(人材の優秀さで競争が発生しにくい構造ですね)
つまり、「社員のスペック(能力)の高さ」ではなく「どれだけ安く雇えるか?」で人材を確保するのが自然です。
”かなり優秀な人材”と”一般的な人材”の差が小さいということです。
さらに言うと、
大体の事業所の利用者さんの定員は20人です。
多めに受け入れても24人程度、、、となる状態。
仮に死ぬほど努力しても1人で7人利用者さんの面倒見れたのが、10人に増えるのが限界でしょう。
繰り返しになりますが、優秀であることとそうでないことの差が10倍も100倍もないのです。あっても1.2~1.3倍と言ったところでしょうか。
国に定められたビジネスモデルがあるため、固定費は必ず一定以上であり、収益も限られます。
(就労移行の詳しいビジネスモデルは過去執筆しておりますので、参考にどうぞ)
もちろん、大手就労移行支援事業所の支援員の給与は高いです。リタ◯コなどは支援員の給与は下限で23万円〜/月となっており、規制の多いシステムからでも利益を出し、年収350万円を超える方法もあります。
人員を増やしたくない理由
人員を増やしたくない理由は、上で説明した内容と被ります。
つまり、人員を増やしても利益は増えないからです。(当然といえば当然ですが…)
むしろ、ギリギリまで減らすまでありますよ。(なんと恐ろしい)
利用者の定員は20人、それに対しての職員配置数も決まっております。そして、職員の数を増やしたからといって一定の人数以上は国からの報酬に反映されません。
(やはり、経営的な面で見た時、職員を増やす理由はないです…)
もし増やすとしたら?
それでも、職員を配置の人数以上に採用する事業所はあります。
一体、それはなぜでしょうか?
考えられる理由は以下の通り
- 就職者をたくさん輩出し国からの報酬単価が増えたから採用する余裕がでたから
- 上の理由と同じく、就職者の職場定着支援に職員が必要だから
- 新しい事業所を開設するから(既存の事業所から人員を次の施設へ引っ張ります)
- ノウハウ不足で忙しくてどうしても人手が不足するから(ダメなケース)
- 名前だけ配置されていて、現場に存在せず他の仕事をしているから(グレーゾーン^ ^)
以上の可能性があります。
1の「就職者が沢山出て、国からの報酬が増えた」パターンであれば、好循環ですね。まさに大手の事業所は利用者さんの圧倒的な就職回数で儲けています!(すごい)
5の「支援員にいろいろな仕事をさせる」パターンは小規模経営であったり、あまり福祉のことに詳しくない会社がやっていると風の噂で聞いたことがあります。(深く言及しないです)
ただ、なぜ5「支援員がさまざまなことをする」ようなことが起こり得るのかについては考察ができます。
とてもシンプルな理屈ですが
1人の人間を”支援員”として従事させるよりも、”支援員+α”で働かせた方が人件費(≒固定費)にムダが少なく済みますし、αの分だけ利益が上がるかもしれません。
無駄を無くそう、生産性を高めましょう。。。
職員が考える就労移行の未来
移行支援ビジネスの展望
私が考えるに、
大手資本の就労移行支援事業所は増え続ける一方、多くの(大手も中小も含めた)事業所が閉鎖するでしょう。
(あくまでも私見です)
理由は、そもそも、就労移行支援事業所の数自体、伸び悩んでおります。その実態として事業所の淘汰が始まっていると推測できるからです。
年度 | 就労移行支援事業所数 |
2020年 | 3301件 |
2019年 | 3399件 |
2018年 | 3503件 |
2017年 | 3471件 |
2020年まで公開されていたのでまとめましたが、2018年は増加しましたが、一気に減ってますね。2020年と2018年を比較すると200件減っております。
しかし、それは移行支援にニーズがなくなったからではないでしょう。(利用者数は増えているので)
施設が減った原因は主に2つ考えられます。
- 就職させることができなかったから(制度的なペナルティがある)
- 新しい利用者を確保できなかったから(収益源は通所です)
1.就職させることができなかった
1の就職させられなかった件、に関して,そもそも就労移行支援事業所は利用者を就職させなければ報酬が減ります。
実は、過去に就労移行支援から就労継続支援A型へ利用者として利用することも、”就職”と扱っていた時代があります。(いまでは考えられません…制度が年々変わってきた結果でしょう)
2022年現在、そのようなことは当然できません。
むしろ国は、障害を持つ人が就職することを重視しております。
就労移行支援に限らず、就労継続支援A・B型事業所でさえも利用者を就職につなげるための努力が求められております。
福祉的就労(いわゆる作業所)ではなく障害者雇用、一般就労で働いていただくことを重視した考えでしょう。
そして、今後も”就職”が促進される制度に変わっていくと考えられます。
ここで、障害者の就職へのノウハウに乏しい、企業開拓に出る余裕のない事業所が淘汰され始めたと考えます。
国の方針次第で事業所の数は増減するのは福祉では色濃くでてきますね。
2.新しい利用者を確保できなかった
2の新しい利用者さん確保が難航した件に関しては、大手の事業所でも努力が必要なところです。
当たり前ですが、出店では入念な調査の後、立地の良い物件の確保、開所までに圧倒的な広告費を捻出し、比較的質の良い人材を確保することができるノウハウと資本の力(パワー!)で他の企業を圧倒します。
利用者の気持ちになると、大手の方が目につきやすく、通いやすく、設備も新しいのです。
Fcや直営、レベシェアなどで市場を確実に抑えに来る大手移行事業所に利用者さんを取られているから小規模の事業所が撤退することになったのかもしれませんね。
福祉事業の独立開業もしやすくなったと言われております♪(資本金2000万円ほどは最低限必要と言われておりますが,,,)
まとめ
就労移行支援で働くことはビジネスモデル上、給与に限界があります。
しかし、国からの報酬を効率よく引き出せる仕組みづくりができる事業所は、ボーナスも給与もしっかり出すことができます。(大手は上手にしております)
ただし、それでも前述の通り頭打ちがあり、より多くの利益を上げるには”固定費を下げる”か”他の部門で収益を出す”ことが肝心でしょう。
当然固定費(人件費、賃料、広告費、、、)を効率化するには限界があります。
多くの大手企業は”Fc運営”や”教材販売”、”国保請求等のシステム販売”、”プラットホーム事業”等さまざまな分野に投資を行っております。
(障害福祉に限らない話ですが)ノウハウを利用して収益を上げているわけです。
ちなみに、施設管理経験者やサービス管理責任者のような人材や資格として希少性の高い人は支援員とは別の給与形態です。年収400万円以上の求人が多いです。理由は職能として替えが効かないことが多く、人数が少ないからです。
支援員からの年収UPを目指す道はサービス管理責任者 or 施設管理者の2択です。
コメント
はじめまして、公認心理師資格取得を目指している大学院生です。
リワーク施設への就職を検討する中で、記事を拝見いたしました。
ご質問させていただきたいてんがございます。
国からの報酬を効率よく引き出せる仕組みづくりとは、具体的にどのようなものでしょうか?
開業にも関心があるため、お答えいただける範囲で教えていただきたいです。
返信が遅くなり申し訳ございません。
管理人のフクシーです🐱
太田さん、はじめまして。
リワーク施設への就職検討されているのですね。
記事を見ていただき嬉しく思います。
公認心理士の取得目指されているのですね。
さて、ご質問内容の
”報酬を効率よく引き出せる仕組みつくり”
となると誤解を招く回答をしてしまいそうになりますが
あえて申し上げますと
具体的には、
「報酬をひたすら算定すること」がその仕組みです。
これは福祉施設全般に言える
持続的に運営するための不可欠な考え方です。
たとえば就労移行支援事業所も
国からの報酬(を算定すること)で成り立っております。
その報酬要件を満たすように
適切な人員を配置し、就職者を排出するなど
報酬が増えるようにひたすら工夫をします。(報酬が増える条件は事業所ハンドブックにも厚生労働省のサイトにも載っているので割愛しますね)
その流れができたら
その報酬額を可能な限り最大化できるように努めます。
そして採算が取れるのであれば
2件目以降の事業所でも
繰り返し、規模を拡大していきます。
長文となりましたが、
少しでもお役に立てれば嬉しいです😊
コメントありがとうございます。